193 名前:名無し三等兵[sage] 投稿日:2009/01/29(木) 18:09:48 ID:???
香港を統治するイギリス上流社会の悩みは理髪だった。中国人の理髪師は
腕は良いが通訳を通じてでは細かい注文が伝わらなかい。ヨーロッパから
来た理髪師もいるが、こんな東の果てに来るのにろくな奴はいない。
そんな時に一人の中国人理髪師が現れた。キングスイングリッシュを流暢に話し、
腕前は欧州の理髪師と変わらず、教養も高く時事にも明るい。すぐに彼は香港の
上流社会で引っ張りだこになり、彼に頭を刈らせないものはいないぐらいだった。
彼が現れて四年後、日本軍が香港攻略を目指して押し寄せてきた。
日本軍の攻撃、とりわけ正確な砲撃の前に力尽き、1941年12月25日のクリスマスに
ついに降伏した。降伏の調印式で日本軍第一砲兵隊司令官北島驥子雄中将のそばに、
日本軍の軍服を着たあの理髪師が立っていた。