770 :おさかなくわえた名無しさん:2009/07/14(火) 01:31:39 ID:Sz0CHrYx
遠い場所まで逃げた。冬の家出はつらい。
考え事をしたいだけなのに、寒くて外にはいられない。
怪しまれないようにネカフェを転々として、お金はどんどん減っていった。
最悪の決心をした。援助交際をしよう。処女を売ろう。体を売ろう。
街に立って親切そうな人にこちらから声をかけることにした。
良さそうな人はなかなか見つからない。
ようやく優しそうな30代くらいの人に目をつけた。
声をかける前に目が合った。
「何か?」
「あの・・・」
練習したはずなのに、わたしと遊びませんか、とは言えなかった。
その人は察したらしかった。
じろじろと見られた。警察の人かも知れないと思っておびえた。
「家出?」 頷くわたし。
「お金がない?」 また頷く。
「泊まるあては?」 首を横に振る。
男の人は少し考え込んだ。そして「一緒においで」といった。
立派なマンションに着いて、少し驚いた。
エレベーターで上がり、男の人は「ただいま」といってドアを開け
わたしに「上がって」といった。
「おかえり」と若くて綺麗な女の人が出てきたときは死ぬほど驚いた。
「あら、こちらは?」
「俺もよく知らん。家出してきて困ってるらしい」
「ええ? あら、それは、えっと、あ、とにかく上がってね」
奥さんらしかった。すごく驚いて慌てていた。
771 :おさかなくわえた名無しさん:2009/07/14(火) 01:32:28 ID:Sz0CHrYx
先にお風呂をすすめられた。
その間に夫婦会議があったようだ。
わたしがお風呂から出ると、奥さんはすっかり落ち着いていて
「大変だったね。すぐご飯にするから」と笑いかけてきた。
こんな展開になるとは思わなかった。どっと安心した。
事情はきかれなかった。
でも黙っていたら怪しまれるし、間が持たない。
食後のお茶の時間、わたしは勝手に自分の事情を説明した。
時々、質問された。2人とも真剣にきいてくれた。
奥さんは口に手をあてて「つらいわね」と涙声でいってくれた。
旦那さんも「つらいな、それ」といって黙ってしまった。
わたしは思わず泣き出してしまい、ご夫婦はわたしが泣き止むまで
長いこと待っていてくれた。
それから覚悟を決めて、旦那さんに援助交際を持ちかけようとしたことを謝った。
信じてもらえる自信はなかったけど、今回が初めてだと必死に強調した。
怖かった、もう二度としないと言った。
奥さんは「ああ、そういうことか」と旦那さんの方をちらっと見て笑った。
「成功してたら旦那とあなたをグーで殴るとこだった」
「もうこんなこと考えるのもだめ」
優しく言われた。怒られはしなかった。
「ごめんなさい」と繰り返して、また泣いた。
772 :おさかなくわえた名無しさん:2009/07/14(火) 01:33:24 ID:Sz0CHrYx
旦那さんは30歳、奥さんは24歳。新婚さんだった。
「落ち着くまで泊まっていくといい」
お言葉に甘えることになった。
翌日、学校の先生に連絡をいれてくれた。
「そうですか、よろしくっていわれたよ。冷たいもんだな」
旦那さんは苦笑いしてた。騒ぎになってなくてよかった。
「のんびりしててね」
何日かはそうした。
いつまでも何もしないでいると申し訳ない。
奥さんの家事を手伝わせてもらうことにした。
奥さんは優しくて明るくて、急に姉ができたような気がした。
2人並んで旦那さんに「いってらっしゃい」「おかえりなさい」を言うようになった。
「不思議な光景だな」と旦那さんは笑った。
ご夫婦に相談に乗ってもらって、今後のことを話した。
「地元が嫌ならこっちで職探ししたら? こうなったら最後まで協力するよ」
そうしますといって卒業式に出るために一度帰宅した。
お寺に行って母のお墓の供養のことを頼んだ。
卒業式の後、安い菓子折りを持って、近所や学校の先生や友人宅に挨拶回りした。
父には「○○で働きます。引っ越すので後始末よろしく」とだけ連絡した。
みんな旦那さんのアドバイスに従ったこと。
「それでいい。けじめは大事だよ」と旦那さんに言われた。
773 :おさかなくわえた名無しさん:2009/07/14(火) 01:34:16 ID:Sz0CHrYx
父からは卒業祝いか手切れ金か、いくらかお金が振り込まれた。
「いまさら」と腹が立った。
「無視されるよりましだと考えたら」と慰められた。
そのお金で引越しができた。
ご夫婦の近所のアパートを紹介してもらった。
心苦しかったけど、お金を借りて敷金と礼金を払った。
アルバイトはすぐ見つかった。
バイトしながら正社員の口を探す日々が始まった。
最初は疲れてしまって、食事はご夫婦のお世話にばかりなっていた。
奥さんが何かと物をもってきてくれた。
2週間くらいで体が慣れて自活できるようになった。
今はある会社で経理事務をやっている。
節約すれば貯金もできる。
正社員として決まったとき、ご夫婦はすごく喜んでくれた。
「娘が独立したみたいだ」と旦那さんは笑った。
「妹でしょ」と奥さんも笑った。
「俺が12歳のときにできた娘」と旦那さんがいった。
年齢でいえばそうなる。
ご夫婦にいろいろ借りてしまったお金も少しずつ返せている。
まだ先は長いけど。
774 :おさかなくわえた名無しさん:2009/07/14(火) 01:35:09 ID:Sz0CHrYx
どうしてこんなに親切にしてくれたのか聞いたことがある。
「たまたまだよ」と言われた。
「誰でも助けるかというとそうじゃないが。でも放っとけない」
ご夫婦のこともいろいろときいた。
わたしほどじゃないけど、お2人ともあまり良い家庭環境ではなかったこと。
それで意気投合して温かい家庭を作ろうと、奥さんが卒業してすぐに結婚したこと。
「そうは見えません。奥さんはずっと幸せに育ったお嬢様みたい」というと
「あら嬉しいことを」と奥さんは笑った。
「俺のおかげだな」と旦那さんがいった。
「でもね、きみには悪いけど、俺たち、きみ以上にきみのお父さんを
嫌いかもしれないよ」と言われた。
「子供捨てるような親はね、大嫌いなんだ」と旦那さんがいった。
奥さんが頷いて、わたしの方を見て「ごめんね」といった。
775 :おさかなくわえた名無しさん:2009/07/14(火) 01:36:11 ID:Sz0CHrYx
今でもご夫婦のお宅をたまに訪ねている。
仲良しのご夫婦を見るのが好きだから。
自分の両親も昔はこうだったと思うとつらくなる。
でも、このお2人のおかげで将来は自分も温かい家庭を持ちたいと思うことができる。
わたしには母がいた。亡くなってしまったけど優しかった母。
優しかった父はどこかに消えてしまった。
かわりに6歳年上のお姉さんができた。
12歳年上のお父さんもできた。
以上です。
こんな良い人がいるんだねぇ……本当、会えて良かったねぇっ(ρ_;)
ありがとう。いい話だ。
お幸せにと心から言いたい
>>61941
頑張れ。
※61941
頑張れ!!
けど、俺が旦那サンだったら…
死ね、俺
心配するな多分俺もだ。
俺も死ね。
本当に、いるんだ…
いつか、家庭を持って、子どもができたら
自分がして貰って、幸せだったこと
そして、
自分がして欲しかったこと、を、するんだよと教わった。
して欲しかったことを、子どもにすることで
親としてだけじゃなくて、幸せな子ども時代を
もう一度、生きなおすことが、できるんだって…
流石にそのポエムには引かざるをえないよ・・・
ちか
この夫婦のやさしさを表現したいなら
もっと違う表現方法があるんじゃないかなぁーと思った
不幸自慢にしか見えないよ
どこをタテ読み?
正直自分には想像のつかない世界だけど、とにかくこういう人たちは実際にいるんだろうな
管理人ありがとう
これが自慢に聞こえるなんて、不幸に憧れてるのか?
気持ちがわからない環境で生きてこれたことに感謝しなきゃだな君は
大変な人はどこにでもいるんだね。頑張れ、ほどほどに頑張れ。
拾う神ありだな
良い話だなあ・・・
俺のように結婚すらできずにダラダラと生きている男の違いを思い知らされた。
人間の出来が違うわ。
不幸に付け込んで・・・なんてしないことは断言できるけど、俺なら逃げる。
赤の他人にここまで手を差し伸べるなんて、とてもじゃないが出来ない。
いや、まじで。
恥かくのはこわいけど、なにか得るために、動かないとと思う。
もう一つの家族って言うのも
良いな~…
幸せ一杯に満たされてくたばってしまえ。
お幸せに(・ω・`)
最初は同情心であっても夫がいつ若い子のほうにころぶかって思ってしまう
奥さんは本当に器が広いと思う