263 名前:水先案名無い人 sage 投稿日:04/08/15(日) 04:31 ID:v9oZgE2Y
当時のことを友人や親に聞くと、様子伺いの電話などには
きちんと受け答えしていたというのだがあまり覚えていない。
おそらくそんなこんなで半年は生活していたと思う。
そんなある日、夢を見た。
どんな夢だったかはほとんど覚えていない。
とにかくひたすら謝っていたように思う。
ふと目が覚めて、「あぁ・・・何か悪夢をみたな」と身体を起こすと、
目の前の光景に心臓が止まるかと思った。
目の前に小さな女の子がちょこんと座って俺を見ていた。
「なんだこれは、夢か?まだ夢か?」
そう思いながら自分の心臓の鼓動で視線がぐらつくのを感じた。
とっさに水子の霊だと思った。
死んだ俺の子が化けて出たんだと。
その時が、はじめて自分の妻と子供が死んだとちゃんと認識した時だったように思う。
その子が、「大人なんだから、ちゃんとしなきゃだめなんだよ!」と俺を叱りつけた。
もう混乱に継ぐ混乱だ。
汗なんかダラダラ出て、心臓麻痺で死ぬんじゃないかと思った。
264 名前:水先案名無い人 sage 投稿日:04/08/15(日) 04:33 ID:v9oZgE2Y
その時、部屋のドアから大慌てで隣の部屋の奥さんが入ってきた。
「すみません!この子勝手にはいっちゃって・・・」
そこでやっと現状を把握した。
よくよく見れば、この子は隣の家の子供で、
妻がいた頃は何度も会話を交わしたことのある子だった。
ドアを開けっ放しにして寝ていた所に入ってきた実在の人間だ。
幽霊じゃない。
「ああ、違うのか」と思った瞬間、
何だか目の前の幕がはがれたような感じで、俺はその子にしがみついて号泣していた。
「すいません」と「ありがとうございます」を意味不明に連発していたと思う。
後から聞いた話では、そこの一家は引き篭もっていた俺のことを心配してくれており、
何度も夫婦で何をしてあげたらいいか、と相談していたらしい。
その相談を一人娘のその子は聞いていて、
落ち込んだ大人を励ましてやろうと活を入れにきたらしい。
すごいやつだ。
とにかく、その日がきっかけで俺はカウンセリングに通い、
二ヶ月程で何とか職場復帰することができた。
届けも出さず休んでいた俺を休職扱いにしてくれていた叔父には本当に感謝している。
隣の夫婦とも仲良くなり、寝起きの悪い旦那を起こしてくれ、とか言う無理のある理由で
毎朝家に呼ばれ、朝飯をご馳走になった。
とにかくもう俺の周りの人間が神級に良い人達だった。
俺は救われたし、妻と子供の死をちゃんと悲しむことができた。
265 名前:水先案名無い人 sage 投稿日:04/08/15(日) 04:35 ID:v9oZgE2Y
で、その娘さんが先月結婚した。(すでにその隣室の親子はマイホームを建て
引っ越していったが未だに仲良くしてもらってる。)
親戚が少ないから、とか言う理由で式にまで俺が呼ばれ、
親族紹介のあとその子と話す時間があった。
俺とその子は口が悪い感じの関係で(15も年が離れているのに)、
その日もあまりにも綺麗になったその子に動揺して
「オメーもまだ18才なのに結婚しちゃってもったいないな」
などと俺が言うと笑いながら
「寂しいのか、あんた?w」などと言いやがるので
「寂しいよ!」と言ってしまった。
「俺は昔、お前に助けてもらった。お前のお父さんとお母さんにも助けてもらった。
だからお前のこと大好きだ。だから寂しい!」
とまくし立てるとまた号泣していた。
30過ぎたおっさんがヒックヒック言いながら花嫁の前で号泣だ、かなり恥ずかしい。
気づくとその子も大泣きだ。
新郎側はびっくりしただろうな。
親以外のおっさんと新婦が大泣きしてるんだから。
俺は今でも結局独り身だが、その子が困ったら何が何でも助けてやろうと思っている。
恥ずかしいのでその子には言わないけどな。
もう俺にとってはあの子は自分の娘みたいなものなのだ。
俺の二人目の子供だ。
本当に、ありがとう、ありがとう。いつまでも幸せにな。
修正しました。
本当に、本当に
よかった
感動した、マジ感動した…。